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​Episode4
協力者からの手紙

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STORY

 答えは『うさぎ』。
 パスワードを入力すると、資料が開いた。


「うわあ、本当に開いた!助かったよ〜!これで大哥に怒られなくてすむ!」

 

 心底ホッとしたように、聶懐桑は安堵の笑みを浮かべた。どうやら役に立てたようだ。

 

「候補生君、本当にありがとう。はい、これは約束の天子笑だ!」

 

 そう言って、手渡されたのは土瓶が二つ。探偵社で魏無羨が持っていた土瓶と同じだ。

 

「重いから、とりあえず二つだけ持っていってくれ。あとは探偵社の方に届けるよ」

 

 受け取るとなかなかずっしりとした重さだった。これを何瓶も……となると相当重いので、残りを届けてくれるというのは助かった。
 そして、聶懐桑はもう一つ、名刺ほどのカードを手渡してきた。綺麗な鳥の絵と彼の連絡先が描いてあるカードだ。

 

「これはさっき言っていたおまけだよ。私は天子笑以外にもいろいろと取り扱っていてね。後々役に立つと思うから是非持っていってくれ」

 

 聶懐桑は扇を開くと口元を隠し、にこやかに笑う。

 

「それじゃあ、またね」

 

 何か含むものがある笑みを浮かべる聶懐桑に礼を告げ、探偵社への帰路についたのだった。

​   ***


 土瓶2つとはいえ、なかなか重い。割らないように気をつけながら、ゆっくり雲深探偵社に戻ることになった。ようやく帰ってきた探偵社の扉を前に、一息つく。
 そして、扉を開けた時、奥から聞き慣れない声が聞こえた。誰かいるのだろうか?来客中なら失礼なことになると思い、入口で様子を伺うことにした。
 部屋をそっと覗いてみると、ソファに腰掛けた藍忘機が誰かと話している。机上にはタブレットが置いてあり、画面越しに誰かと話しているようだった。その後ろで魏無羨はソファに手をかけ、藍忘機の肩越しに同じ画面を覗いていた。


「それで……はどう……だ?」
「こちらの準備は……だ。………最後の………を頼むぞ〜」
「まったく………も考えずに…………がって」
「こちらで……………そちらとも…………になる。……………が必要だ」
「了解……だが……つくぞ」

 

 何を話しているのかはここからでは断片的にしか聞き取れなかったが、何かの仕事の話のようだった。程なくして通話が終わったようで、藍忘機がタブレットをぱたんと閉じる。その表情は心なしか険しく、重いため息をついた。
 藍忘機の背後から表に回った魏無羨もそれに気づいたのか、一瞬目を見開き、そしてふと微笑んだ。

 

「藍湛」

 

 魏無羨の優しげな声が部屋に響く。その声に顔を上げた藍忘機の肩に魏無羨が手をかける。そのまま、彼の膝の上に乗ってしまった。

 

「そんな不機嫌な顔をしないでくれよ」

 

 藍忘機に抱っこされる形で、着地した魏無羨は片方の手で彼の肩をつかみ、もう一方の手の人差し指で藍忘機の唇をなぞる。

 

「こちらだけでも解決できた問題だ。……んの手を借りずとも」

 

 唇をなぞられているのに、藍忘機は動じない。それどころか、彼の瞳は、魏無羨から視線を外すことなく彼を捉えている。

 

「それじゃ、これからのことを考えるとまずいんだって。なぁ〜、機嫌直して?」

 

 そう言って、魏無羨の唇が藍忘機の顔に近づいて……。

 

 ……これ以上は、見てはいけない気がする!

 

 そう思い、外に出ようとした時だった。
 かちゃん。
 こちらが動揺して動いたため、持っていた天子笑の酒瓶同士が触れ合い、音が響いた。
 それに気づき、魏無羨と藍忘機の視線が入口に釘付けになる。

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「え、候補生君?!帰ってたのか!」
「そういえば先程、扉の開く音がしたな」

 

 慌てる魏無羨と冷静な藍忘機。
 魏無羨はすぐに藍忘機の膝から飛び下り、取り繕おうとするが時すでに遅し。対して藍忘機は特に慌てず、むしろ魏無羨が離れたことに対してまた顔が険しくなったように見える。
 これでは隠れても意味がない。腹を括って、顔を出した。

 

「おおおおつかいありがとなっ!いやー、助かった!」

 

 とりあえず、おつかいで買ってきた天子笑を魏無羨に渡せば、苦笑いされた。魏無羨はわざと大仰に褒めるが、全くごまかせていない。こちらの視線に何か感じるものがあったのだろう。魏無羨に酒瓶を渡すと、「お、奥に置いてくるな〜」とそそくさと探偵社の奥の部屋に行ってしまう。
 一方、所長の藍忘機の方は動じることもなく、こちらへ話しかけてきた。

 

「ご苦労だった」

 

 言葉はこちらを労ってはいるが、藍忘機の表情が読めない。薄ら寒い空気がこちらへ漂っているのは気のせいだろうか。冷静に見えて、これはだいぶ不機嫌なのでは……?
 今後、二人の逢瀬は邪魔しないように気をつけようと心に誓う。

 

「帰ってきて早々だが、君に探偵社で今追っている案件を一つ任せたい。……魏嬰」
「ああ、今持っていくよ」

 

 藍忘機が魏無羨を呼ぶと、奥から彼が戻ってくる。その手には、一枚のカードが握られていた。それをこちらに手渡してもらった。

 

「先程天子笑を買いに行く前に、君が拾った封筒の中に入っていたものだ。探偵社の協力者からの手紙だったのだが、情報が漏れることを危惧して暗号を送ってきたらしい」

 

 カードをよく見ると、そこには数字の暗号が書かれていた。

​問題4

問題
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